《MUMEI》
老人と男
長い階段を降りたさきにその部屋はあった。

ソコは部屋と呼ぶにはとても広かった。庭付きの家が三軒はすっぽり入りそうなとても広い空間。

辺りの石はところどころ淡い光を放ち、その光はこの空間を薄暗く照らしていて、どこか神聖な空気を漂わせている。
奥には大きな長方形に切り出されたような柱のような漆黒の水晶がある。

コツ、コツ。音が響き渡る。
一人の老人がその空間に入って来た。

「久しぶりだね、長老さん」声が聞こえくる。

長老と呼ばれた老人は水晶をみつめる。
「お前さんにだけは、長老なんて言われたくはないわい」

「はははっ。それもそうだね。所で、外の様子はどうだい?」声は、楽しそうに話す。

「変わらんよ。帝国は次々と近隣の国々を攻め領地を拡大している。住むところ奪われた民は、賊になり他の村を荒らしておる。世界が荒れようる。」

老人は真剣な眼差しで話す。それを知ってか知らずか声は、

「へぇ、そうなんだ。ここにいると、長老位しか話し相手がいないら暇でね〜」

「そこから出る気はないのか。分かっているのだぞ。お前さんがその気になればそこから出れることくらい」

「ごめん、今はまだだめなんだ。今はまだ」
声は急に真剣になった。

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