《MUMEI》
隊長
 三人が向かった先は、どうやら討伐隊の休憩所らしい建物だった。
羽田の世界では役所として使われている建物だ。
中に入ると、やはり電気はついていない。
代わりにキャンプ用のランタンが天井からぶら下がっていた。
ユラユラと揺れるランタンの光が少し不気味に感じられる。
よく見ると廊下にある窓にはすべて黒い布が張られてあった。

 副長は羽田と凜を廊下の先にある広い部屋へと連れて行った。
中には数人の男達が机の上に広げた地図を覗き込んでいた。
羽田は部屋を見渡した。
やはり窓には黒い布が張られている。
ランタンは部屋の左右と中央に一つずつ置かれていて、廊下より明るい。
さらに視線を壁の方へ向けると、そこに様々な見たことのない道具が置かれてあった。

「おい、藤沢。誰だ? その人は」

部屋に響いた声に、羽田は視線を戻した。
見ると、地図を覗き込んでいた男の一人がこちらに近づいてきていた。
どうやら副長は藤沢と言う名らしい。

「ああ、隊長。じつはちょっと訳ありでして」

副長は困った顔で頬を掻く。

「訳あり? この人がか?」

隊長と呼ばれた男は、そう言って羽田を見つめた。
羽田も隊長を見返す。

隊長は四十代後半ほどに見える。
副長と同じく相当鍛えているのだろう、体は大きく、その目には人を威圧する迫力があった。

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