《MUMEI》
晩餐
料理を作り終え、僕はデザートの支度に取り掛かっていました。

パイ生地に切った林檎を並べていると──

「──リュート」

扉を開けてアンリ様がひょっこりと顔を覗かせたので、僕は一旦手を止めて──

「如何なされました?」

軽く腰を屈めると、目線を合せて尋ねました。

すると、アンリ様は少し躊躇気味に、

「アイスクリームもお願いしていい‥?」

そう仰いました。

「はい、勿論」

僕の返事にアンリ様は安堵した表情を浮かべると、広間の方に戻って行かれました。

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