《MUMEI》

「みたいだな。にしても、うぜえよな。この半年、ずっと画面に映ってんだぜ。どんだけ捕まえたいんだっつー感じだよな」
「しょうがないんじゃない? 国の偉い人殺しちゃったんだから」
「だったら、さっさと捕まえろよって話だろ。俺だったらソッコーで捕まえるけどな」
男がヘラヘラ笑いながら言った。
それに合わせるように女も笑う。
ユウゴはそんな二人を冷たく横目で睨んで、視線を前方に戻した。
 信号が青に変わった横断歩道を渡り始めながら、ユウゴは「まだ、半年しか経ってないのか……」と小さく呟いた。
そして大きくため息をつく。

もう、手持ちの金がない。
食べる物もなく、この二日間何も食べずに歩き続けていた。
食べ物のことを考えた途端、腹が鳴る。
もう限界が近い。
そう悟ったユウゴは、まだヘラヘラ笑いながら会話を続けているカップルに目をやった。
そしてその後ろへ回り込み、ピッタリとくっついて歩く。
二人はそんなユウゴに気付くことなく歩いていく。
しばらくそのまま歩き、ユウゴはタイミングを見計らって二人の間に割って入るように両手で抱えるように二人の肩に手をかけた。

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