《MUMEI》

ユウゴは素早く銃口を女の口へ向けた。
「声を出すな」
低い感情のこもらない声でユウゴが言う。
男女は顔を引き攣らせたまま、何度も頷いた。
ユウゴは口元に少し笑みを浮かべると、「財布出せ」と命令する。
二人は言われた通り、ゆっくりと鞄やポケットから財布を取り出し、ユウゴに差し出す。
ユウゴはそれをポケットに収めると、二人を後ろ向きにさせた。
二人の肩が小刻みに震えている。
何をされるのか不安なのだろう。
ユウゴは男の首の後ろに銃を突き付けた。
「ひっ……! やめてくれ」
情けない声で男が言う。
ユウゴは笑った。
「俺をソッコーで捕まえるんじゃなかったか?」
冷たい口調で言ったユウゴに、男は頭を左右に振って「すみませんでした」と繰り返す。
「カッコ悪い彼氏だな」
ユウゴは呟くと二人の頭を思いきり殴りつけ、その場から早足で立ち去った。
背後でうめき声とドサッという音が聞こえた。

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