《MUMEI》

バタバタと大勢の靴音が聞こえてくる。
ユウゴはできるだけ周りの人達に混じって自然に歩き続けた。
すぐ横を重々しい装備をつけた男たちが走り抜ける。

 プロジェクト中、ユウゴ達を追っていた警備隊たちとは違う、紺色の制服に防弾チョッキを身につけた男たち。
その全員が手に銃を持っていた。
 彼らが警察でないことは明らかだが、どんな組織なのかはユウゴにはわからない。
おそらくプロジェクトに関係した組織なのだろう。
ユウゴは勝手に彼らを追撃隊と名付けていた。
遠くなる追撃隊の背中を見ながら、ユウゴは小さく息を吐く。

 最後に彼らと出くわしたのは四日ほど前だ。
あれから服は全て変えた。
髪型も変えたのだ。
パッと見ただけではわからないだろう。
ユウゴは自分にそう言い聞かせながら歩く。
しかし、そんなユウゴに前方から歩いて来た中年の男が気づいた。
男はユウゴの顔を見て「あっ!」と声をあげる。
ユウゴは思わず顔を上げて男を睨んだが、すでに遅かった。
彼は大声で「ここにいるぞ!」と怒鳴っていた。
瞬間、ユウゴは走り出していた。

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