《MUMEI》

「‥‥ウチが悪いねん」

「ぇ‥?」

「アカン事訊いてもうて‥」

「何て訊いたの?」

「『新木は何で本が好きなん?』‥て」

「ぇ、普通の質問じゃん」

「せやけどあいつには嫌な思いさせてもうたみたいで──‥」

「何かあるっぽいね〜‥」

「‥うん‥」

肩を落としとると‥

菜摘がウチの手を握ってきた。

「ほ〜ら、入ろっ、教室♪」

「‥ぇ、無理‥」

「大丈夫だって。茉莉が悪気ないのは新木君だって分かってるはずだよ?」

「‥ぇ‥」

「ね?」

「ぇ、でも‥、ちょっ」

ウチは無理矢理──

教室に連れ込まれてもうた。

「‥‥‥‥‥‥‥」

入ったからには机に向かわなアカン。

なるべくあいつを見ーひんようにして‥

何とか自分の席に座った。

でも‥

隣りに座っとるはずやのに‥

何だか壁があるような気ぃして‥。

結局1度も目ぇも合わせられへんくて‥

何も喋れへんかった。

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