《MUMEI》

「──リュート」

御食事を半分程済ませた頃、アンリ様はナイフとフォークを動かしていた手を止めて僕の名を呼びました。

「はい、何でしょうか」

側に行くと、

「後でデザートを持って来てくれる?」

楽しみで待ち切れないといった様子で、アンリ様は仰いました。

「はい、後程御持ち致します」

そう答えて下がると、アンリ様の御食事の様子を見つめながら、僕はデザートを御運びするタイミングを見計らっていました。

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