《MUMEI》

前方からさっき走り去って行った追撃隊が戻ってくる。
ユウゴは体の向きを変えて来た道を走って引き返した。
しかし、そちらからも銃を構えた追撃隊が走って来る。
誰かの「いたぞ!」という声が辺りに響いた。
ユウゴは大きく舌打ちをして、すぐ近くにあったデパートのビルへ駆け込む。
閉店時間が近くとも、まだ客が多い。
別の出口を目指して走るユウゴを、客たちは奇妙な目で見てくる。
あと少しでビルの反対側に出ることができる、そう思った瞬間、背後から悲鳴が響いてきた。
振り向くと、追撃隊が銃を構えてユウゴを狙っているところだった。
「くそっ、マジかよ」
呟いた瞬間、銃声が響き渡った。
ユウゴはほとんど体当たりするようにして、ガラスのドアを開け、外に飛び出る。
直後、ドアとその付近のガラスが砕け落ちた。
思わず店内に目をやると、買い物客たちが床にうずくまって頭を抱えていた。
中には弾が当たったのか、血を流している者までいる。
「一般人でもお構いなしかよ」
呟きながら走り出したユウゴの前に、回り込んでいたのだろう、追撃隊が並んでいた。
「よう。いつもご苦労さん。今回は、何人来たんだ?」
言いながらユウゴは素早く逃げ道を探した。

並んだ追撃隊の間隔は広い。
うまくすれば抜けられるかもしれない。
ユウゴは素早くポケットからボロボロのナイフを取り出すと、中央に立っている隊員の顔面目掛けて投げつけた。
それと同時に走り出す。

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