《MUMEI》

一通り仕事を終えて手帳を取り出すと、御食事の御所望やレッスンの予定を確認して軽めの食事を摂り、アンリ様の御部屋へと向かいます。

ノックと同時に、

「入って」

アンリ様が仰られたので、扉を開けて御部屋の中に入ります。

既に白いネグリジェを纏いベッドに御掛けになったアンリ様は、僕に側に来るよう仰いました。

「何か──御話を致しましょうか」

「うん、お願い」

「──畏まりました」

僕は薔薇の精の御話をして差し上げる事にしました。

アンリ様は、この御話が大好きなんです。

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