《MUMEI》

「……はあ。」

「どうした―?樹最近溜息多いよー。」

「ん…?若菜、俺ホームルームサボるから。」
机に突っ伏して枕代わりの腕から顔を半分出した。

すぐ目の前に田畑若菜がいた。特徴的な大きな二重の瞳がこちらに向いている。肩まで伸びた髪が俺の腕に引っ付いた。

「…駄目です。委員長命令よ、今日は球技大会の種目割り当てもあるし、何て言ったって、
席替えがあるのよ?」
口角がこれ以上ないくらいに笑みを構成する。

「いや、どうでもよいよ。」顔をもう一度伏せた。

「気になるあの子と隣になりたいでしょ〜?」

「…はいぃ?」

「皆きっと斎藤君の隣を狙っていると思うワケさっ!クラスに馴染み切れてない斎藤君の為に委員長が一肌…という心遣いも含みこの機会に席替えを。」

「お節介。」

    ゴツン!
「天誅!」
若菜の顎が後頭部直撃。






「宜しくね、斎藤君。委員長の田畑若菜です。ほらほら、樹、ぼーっとしないの!これは高柳樹だから、なんでも申し付けてね!」
若菜は斎藤アラタの隣の席を引き当てた。

斎藤アラタの以前の席には俺。

俺に話しを振ってきた若菜は斜め前。


つまり、斎藤アラタは俺の前にいた。

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