《MUMEI》

美春のを選ぶんにも手間取ってもうてたから──

アパートに帰ったんは夕方になった頃やった。

≪ガチャ‥≫

部屋に入ろうとした瞬間──

「ぁ、先輩どこかいってたんですか?」

真冬ちゃんが丁度隣りの部屋から出て来た。

オレは袋を後ろに隠して──

「ちょっと気分転換にな(笑)」

嘘はつきたなかってんけど咄嗟にそない言うてもうてた。

真冬ちゃんはニコッと笑うて全然疑いもせんと──

「そうですかぁ(微笑)」

て納得した。

「ぁ、そういえば夏芽君知りませんか?」

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