《MUMEI》
至福時
夜中の12時。

再びこの御部屋にやって来ました。

アンリ様は静かに御休みになられています。

銀色の月光に照らされたその姿は、まるで天使のよう。

その美しさに、僕はいつも見惚れてしまうのです。

ですが、それも束の間。

僕の中のヴァンパイアとしての本能が、黙ってはいないのです。

ゆっくりと近付き、首に掛かった長い金色の髪をそっと掻き上げると、露になった首筋に牙を当てました。

「───────」

これが僕の至福の時。

蜜のように甘く、花のように香る血。

これを頂いている時程幸せな時間はありません。

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