《MUMEI》

「は?」


二人して声がハモった。

「だから、学校サボらねぇ?って言っとぅと!」


唖然とする俺達に、
更に同じ言葉を繰り返す。


「な、何言ってんのお前…。」


蓮翔ちゃんはようやく気付いたようだ。


「…サボる訳ねぇだろ。」


「俺も同感。」


俺も蓮翔ちゃんに同意した。


「なんで?」


「いや、だってサボるのは誤法度だろ。
なぁ、颯ちゃん。」


そうだ。


俺と蓮翔ちゃんにとって、
“サボる”と言う言葉は有り得ない。


例えその対照が野球や、陸上で無いとしてもだ。


これは父さんに叩き込まれたことだ。


恐らく蓮翔ちゃんもそうだろう。


お互い結構な苦労をしたからな……。


だが賢ちゃんは違う。


コイツは一つのことにしか眼中に無い。


それはサッカーだ。


だからつい最近までブラジルや、
フランスに留学してたのだ。


勿論、サッカーのために。


其れゆえ、“サボる”などと言う言葉を使ったのである。


「無理に決まってんじゃん!」


蓮翔ちゃんはキレる寸前のようで、
賢ちゃんに食って掛かった。

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