《MUMEI》

司書の先生が戻って来たから──

読んどった本を借りて図書室を出た。

その足で向かうんは‥

やっぱり屋上。

風はちょっぴり涼しなってきとる。

「──ねぇ」

「ぇ‥?」

「楽しみ──だね」

「文化祭‥?」

「──うん」

新木はいつかの時みたいにフェンスから軽く身を乗り出した。

「──ぁ」

「どないしたん‥?」

「飛行機雲」

「‥?」

新木が示した先を見る。

「ぁ、ホンマや──」

長く伸びた雲が一筋──。

綺麗やて思た。

何だか嬉しなってきて──

無意識に笑みが零れとった。

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