《MUMEI》

微かに薫ずる薔薇の香り。

香水の香りでしょうか。

先程まで気付きませんでしたが──アンリ様からは薔薇の香りがします。

僕は、その白い頬に顔を近付けては離してを繰り返していました。

何をしているのでしょう、僕は‥。

ベッドから離れると、扉を開ける前にもう1度アンリ様を振り返って御部屋を後にしました。

ですが、報酬は存分に頂いた筈なのに──何か満たされない感覚があるように思えてなりません。

一体僕は──どうしてしまったというのでしょうか‥。

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