《MUMEI》

「そうでなければ、とっくに死んでいる」

その呟きに答えた。

「じゃあ、長引くとオレが負けちまうなぁ」

長髪の男はおかしそうに笑い、刀を腰に戻した。

「まさかこんなに出来るヤツだとは思ってなかったよ。ああ、久し振りの強敵に、気分が乗ってきた」

収めた刀に手をかけて、そこで動かずにじっと立ち続ける。しっかりと睨んだままで。

「居合い…か? 面白い、それにのろうじゃないか」

短髪の男は構えたままジリジリと詰め寄り、自分の間合いまであと5歩の所で立ち止まる。

多分、向こうも同じぐらいの間合いなのだろう。

「おいおい、怖じ気づいたのか? もっと踏み込んで来いよ」

挑発的な台詞。しかしこちらとしてはありがたい。

一瞬考え、弾けるように短髪の男は飛び出した。

そして相手の間合いに飛び込んだ瞬間。

ヒュッ!!

横薙ぎに斬撃が襲い掛かる。しかし。

キンッ!

弾く音。太刀を片手に持ち、居合いを防いだのだ。空いた手には脇差しが握られているが、相手には見えないように隠している。

長髪の男もそれは読んでいたのだろう、刀を抜いた瞬間に片手に持ち変え、もう一本を構えていた。

短髪の男は険しい表情で長髪の側を駆け抜けた。

どちらの刃が切ったのかは分からないが、血しぶきが上がる。

そこに立っていたのは、一人だけであった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫