《MUMEI》

「やっぱ滝澤颯馬だっ!!」


何処からともなく聞こえた声に、
更に歓声が上がった。


バカか?こいつら……。


飽きれてその場に立ち尽くしていると、
ふと女子達がある新聞紙を広げて騒いでいるのが目に入った。


それは、俺が今朝見たのと全く同じ一面だった。


まさかこいつらこれを見て……。


今更気付いたのか?


俺が陸上やっていることに。


そうと分かれば後は一目瞭然。


「きゃあ!!
颯馬くん握手してぇ!!」


「滝澤颯馬君!
サイン下さいっ!!」


ほらな。


俺に群がるクラスメイト達。


その中には……。


先生までもが騒いでいる。


俺は必死にそいつらを掻い潜ると、
弾かれたように教室を飛び出した!


見ると、蓮翔ちゃんがこの世の終わりを見るような表情で、
俺の前を全力疾走している。


蓮翔ちゃんの後ろには、目をハートにさせた女子や、
奇怪な雄叫びを上げている男子が追いかけていた。


そして、その中の一人が俺の存在に気付くと、
連なるかのようにして一斉に俺をみる。


ヤバいっ!!


俺は咄嗟に身の危険を感じて、
廊下を走った……。

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