《MUMEI》
廃棄
赤い空が徐々に近づいてくる。

「あと少し…あと少し!」
貴士の息は切れ切れだか、決して足は止めない。

近づく赤い空を見上げながら、スピードを早めた時だった。


「は?あれ…何‥で…?」
突然それが消えたのだ。


薄っら消えていくのではなく、急に、何の前触れもなく、そこは元の黒い空に戻ったのだ。


「どうなってんだ…?」


わけが分からず、キョロキョロと辺りを見渡す。


「何だ…ここ…?」

暗くて‥いや、動揺していて見えていなかったのか、貴士の目の前に、廃棄と化した一件の古びた屋敷が建っていた。


「何かコレ、ヤバくね…」

誰に言うでもなく呟く。

それ程に、この廃棄はただならぬ空気を纏っていた。

“逃げろ!!”


本能がそう命令する。


既にギリギリの体力に鞭を打ち、走りだそうとした瞬間だった。

廃墟の方から、突然熱風が吹いてきたのだ。

「うわっ!?熱…っ!!」

熱風に襲われた貴士は、思わず目を瞑った。

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