《MUMEI》

割れたティーカップの破片を片付け終わった時には、もうアンリ様はデザートの果物を御召し上がりになってらっしゃいました。

「先程は‥失礼を致しました‥」

深々と頭を下げながら不安に駆られていると‥

「顔を上げて」

「──ですが‥」

あのような失態をしてしまった以上、僕は‥。

「──リュート、命令だよ?」

「‥‥‥‥‥‥‥」

命令、と言われては背く訳には参りません。

ですが‥。

そう思っていると、躊躇している僕の頬に‥アンリ様の手が触れました。

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