《MUMEI》
信用できる友達
《情けないな》

「うるさいな、仕方ないだろ?」


文化祭の様子を報告した俺は、早速忍に嫌味を言われた。


《お前、本当にその女王様とは何もないだろうな》

「志貴とは友達だ。それに、俺はもう…」


『もう、誰かを愛したりしない』


《そうだな》


俺が口にしなくても、俺の気持ちを理解している忍はそれだけ言った。


《…普通は、お前位の年代は、恋愛に興味があるんだけどな》

「それは、仕方ないだろう?」

《わかっている。それより、演劇の衣装、お前、大丈夫なのか?背中は》

「夏休みに、守に特訓してもらうから」


今年は合宿しなくても、余裕で文化祭に間に合う状態だった。


ただ、俺の衣装は


女物の着物だから、守から着付けと基本動作を徹底的に教わるつもりだった。


《着物屋の息子に見せるのか?》

「教わるだけだ」


守は友達だし、俺が一人で着付けをしたいと伝えたら、心よく応じてくれた。


《信用できるのか?》

「できるよ」


守は、俺をからかうような事はするが、俺が本気で嫌がる事は決してしなかった。


だから、俺は自信を持って『できる』と答えた。実際、守『は』信用できた。

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