《MUMEI》
よくあるお話
「はぁ…」

もう何度目かわからない溜め息を、彼女は窓際に寄りかかって吐いた。

「今日も、ダメか…」

彼女は落ち込んでいる。理由は、一年前に「すぐに帰ってくる」と言いながら出て行った彼氏を待っているのだ。

雲一つない空に、膨れっ面で愚痴を零す。

「何が、すぐに帰ってくる、よ…。全然早くないじゃない」

いじけながら、しかしそんなことをしても彼が帰ってくる訳でもなく、いつも通りの「1日」を始めた。

まず最初にアルバイトの仕分けだ。近くのコンビニで4〜5時間ほどその作業をしたあと、買い物に。

スーパーは少し離れた場所にあり、その距離が邪魔くさいな、なんて思っている今日この頃。

とりあえず今日の夕飯の材料と、今後必要だろうと思われる物を買い、荷物を抱えながらフラフラした足取りで家に帰る。

「もう、こんな時にあの人がいれば助かるのに…。役立たずめ…」

なんて恨まれるような事を呟いて、アパートの階段を上った。
言い忘れていたが、彼女が暮らしているのは4LDKのいいアパートだ。彼女曰わく、一人だと少し寂しい気がしないこともないらしい。

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