《MUMEI》

「…あんな死体は初めて見ましたよ」

「! お亡くなりになったのですか?」


私の問いかけに、警部さんは無言で頷きました。


「どうして…」


だって、あの日、昭人様は…


「こっちが聞きたいですよ。桜の花びらで窒息死だなんて、まったく…」

「桜の?」


警部さんは、また頷きました。


「そりゃ、もう、誰かが無理矢理詰め込んだみたいに、すごかったんですよ」

「馬鹿野郎! あんなこと、普通の人間には無理だ! あんな大量の花びら、一体どうやって…」


後ろに立っている警官に怒鳴りつけた後、警部さんは無言で考え込んでしまいました。


「やっぱり櫻は人では無かったのかしら…」


だから


皆の心を狂わせ


最後に残った昭人様も殺したのかしら…


「どういう事ですか?」


私の言葉に、警部さんが顔を上げました。


ひどく険しい表情は睨んでいるように見えて、私は思わず目をそらしてしまいました。


それでも、私は視線を手元に移したまま、ゆっくりと話し始めました。


櫻の事を


そして、『あの日』の事を

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