《MUMEI》

櫻は私と同じ、使用人の一人でした。


にもかかわらず、櫻は屋敷の


亡くなった奥様の部屋を使っていました。


それほど櫻は旦那様や


旦那様の御子息の


優しく頭脳明晰な長男・治人様


逞しく武芸に秀でた次男・昭人様


に、とても愛されていたのです。


それほど櫻は美しい少女だったのです。


そのせいか、いつの間にか小早川家の屋敷には、女の使用人しかいなくなってしまいました。


その現状を誰よりも心配しておられたのが


私がお世話をさせて頂いていた


大奥様


旦那様のお母様でした。

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