《MUMEI》

その夜は、櫻の誕生日の前日でした。


櫻はその時十五。


十六になれば、結婚できる年になります。


『誰が櫻と結婚するか』


そんな理由で、三人は旦那様の部屋で口論していた様子でした。


『止めなくていいのですか?』

『それよりも、やる事があります』


旦那様の部屋を通り過ぎ、大奥様と私が向かったのは


『入りますよ、櫻』

『は、はい』


櫻の部屋でした。


『体調はどうですか?』

『今は、楽になりました』

大奥様の言葉に櫻は微笑みました。


櫻は生まれつき心臓が弱く、寝込む事も度々ありました。


その儚い美しさが、また男性を惹き付けているようでした。

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