《MUMEI》
満月夜
今宵は満月。

僕にとってこの夜は、いつにも増してヴァンパイアの本能が覚醒されてしまう為──それを抑えるのが一苦労なんです。

もし僕が完全なヴァンパイアであったなら、今頃こうして仕事をしてはいられないでしょう。

カタン、と物音がして振り返ると、そこには‥あの御方が。

「アンリ様──」

「眠れないの‥」

「何か──悪い夢を?」

「ううん、ただ‥何となく──」

項垂れるアンリ様の肩にそっと手を置くと、

「少々御待ちを」

キッチンに入り、僕はある飲み物を作りました。

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