《MUMEI》
‐陸‐
小坂は秋茜を見つめて嬉しそうにしてる。

僕が人差し指を差し出すと──

秋茜が指先に止まった。

「ゎ‥」

小坂は目を円くさせてビックリしてる。

「新木──上手やなぁ」

「‥ぇ、そう‥かな」

「ウチなかなか出来ひんねん。逃げられてもうてばかりで」

小坂は苦笑しながらそう言った。

それから僕の指に止まった秋茜をマジマジと見つめて──

目を輝かせた。

その様子を見ながら──

僕はふと思い付いた。

「──小坂」

「?」

「指、出して」

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