《MUMEI》
・・・・
 だが、五年と言う歳月が町を大きく変えてしまった。
 窓から流れる景色は住んでいたころの面影はほとんど無くなり、華やいでいた。

 すこし語弊があるかもしれない。いまのは客観的に見た場合だ。人は綺麗になったと、町が活気に満ちたと喜び、褒めるだろう。
 俺個人の感想は違う。華やいだどころか、むしろ悪くなっていると言いたい。
 無駄に大きな建物がそびえ立ち客を集めている一方、一角では潰れた商店がボロ雑巾のようにそのまま放りだされている。
 取り壊されることも無く、ただ在るだけ。


 この町を夢想していた時はよかった。あのころの町しか知らない俺は、期待に胸を膨らませ家を出た。
 あのパン屋群はどうなっただろうか? 何を食べようか?
 駅員を尋ね、あのころの思い出話をして、土産話のひとつでもしてやろう。

 そんな楽しく愉快な妄想を繰り広げていた。
 阿呆としか言えないな・・・・。

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