《MUMEI》

「──どうぞ」

僕が作ったのは、チョコラテ。

アンリ様がローズティーの次に御好きな飲み物がこれなんです。

温かいチョコラテの入ったカップを両手に包み込むと、アンリ様は微笑みました。

「ありがとう」

カップを口元に持っていくと一口含んで、安堵したように、ふぅ、と息を吐きました。

「落ち着きましたか?」

「──うん、さっきよりはだいぶ」

そう仰ると、アンリ様は再びカップを口元に近付けて、ふと動きを止めました。

「──カーテンを開けてくれる?」

「はい、畏まりました」

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