《MUMEI》
・・・・
 数分間バスの揺れと座席の固さに耐え、バスを降りた。
 バス停には思ったとおり人が待っていることも無く、バスは誰も乗せること無く扉を閉め排気ガスの匂いを残して走り去っていく。
 バスの尻にあるナンバープレートを見つつバスを見送ると、俺は地べたに置いていた小さなバッグを拾い上げた。
 持って来ているのはこのバックだけで、これからの予定も何もない。はっきり言えば明日の朝を迎えるところすら決めていない状態だ。
 「はぁ、無計画にもほどがあるな・・・まぁ日が落ちるまでに見つければいいんだ、何とかなるだろ」
 楽観的に考えてしまえばあとは簡単なことで、その辺をぶらつくことにする。
 人と同じで、町は変わるものなのだと実感した。きっと、ここに住み続けていれば気付かなかっただろう。時間を空けたからこそ気づけたんだ。
 良い意味でも悪い意味でも、俺は気づくことが出来た。

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