《MUMEI》

「綺麗──。満月だね」

「そうですね」

あまりあの月を見たくは無いのですが──、御喜びになるアンリ様の表情に気付いてしまってはどうする事も出来ません。

ですがこのまま覚醒すれば、僕は牙を立ててしまうでしょう。

どうすれば‥。

「リュート、どうし──‥」

アンリ様の御言葉を遮ったのは、僕でした。

「──直ぐに戻ります」

それだけを言って、一旦僕は広間から出ました。

深く深呼吸をして壁に凭れると、少しの間目を閉じて自分に暗示をかけていました。

せめて、アンリ様が御休みになられるまでは我慢しなくてはなりませんから──。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫