《MUMEI》
処刑台
 「彼らは神を冒涜した、神を信仰せず欲にまみれた人間だ。しかし、神は穢れた彼らを見捨てはしないだろう。神のもとへ逝けることを誇りに思い、神に仕えるがよい」
 街の広場で張り付けられた三人に罪状を伝える神官。三人は神官の言葉を聞きもせず声を荒げ、潔白を訴え続ける。
 「私たちが何をしたっていうの。どうして信じてくれないのよ、私たちは潔白なんだから」
 「このクソ神官が、どうして俺たちがこんなことされなくちゃなんねえんだ!放せよクソっ!」
 「ほんの、小さな幸せでよかったのに。どうしてこんなことに、私たちには許されないの。ささやかな幸福さえも」
 頬を伝う涙。足もとの枯れ木に小さなしみを作り消えていった。
貼り付けられた三人を罵倒する信者から小石やゴミが投げつけられる。
 「神よ、浄化の炎により愚かな者たちを貴方様の御許へお送りいたします。どうか彼らの現世での振る舞いをお許しいただき、優しく包んでいただけることを」
 穏やかな声で神官が言い終えると松明を持った兵士が火をつけにかかる。
 赤く燃える炎。揺らめきパチパチと空気を吸い込み弾けていく。
潔白を証明しようと叫び続ける女。
 怒りを露わに縄を引きちぎろうと、全身を目一杯揺さぶる男。
 力なくうな垂れ、悲しき運命に生まれたことを悔い涙を流す少女。恐怖に呑まれた心は徐々に沈み始める。

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