《MUMEI》
兆し
 晴れ渡った空、それなのにそのしたでは無残な場面がなおも続いている。貼り付けられた三人に声を荒げ、石を投げつける民衆。罪人に火を近づける兵士。
 足もとに死が近づく。民衆の怒りにも似た声がより一層大きくなる。
 「異教徒が!お前らは神を侮辱する下衆だ。神に許しを請え」
一人の言葉に続き同意の言葉がぶつけられる。
 「異教徒、あんたたちは死ななきゃいけないんだよ」
 「その存在自体が間違いだったのだ」
 血走った目、叫ぶたび飛び散る唾。彼らは何かにとり憑かれたように声を上げ続ける。
 松明と枯れ木との距離がゼロに近づく。
 貼り付けられた三人に様々な思いが走る。

 こんなところで死ぬなんて、私は無実なのに。どうして、どうして、どうして、どうして。

 くそっ。殺してやる、全員。殺してやる。

 これでお父さんとお母さんのところに行けるのかな。行けたら、いいな。そしたらきっと――これからは楽しいことが・・・・

 混乱、憎しみ、生への見切り。様々な感情が渦巻く。

 その時、誰もが予想しない出来事が起きた。何の前触れもなく、突然。
 それは空からだった。降り立った者は黒。

 その姿は神のように神々しく。

 魔神のように魔に満ちていた。

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