《MUMEI》

ようやく気持ちを落ち着かせて広間へ戻ると、アンリ様はまだ窓辺で満月を眺めてらっしゃいました。

「大丈夫‥?」

僕の気配に気付いたのでしょう。

アンリ様はこちらを振り向いて心配そうな表情を浮かべています。

僕はなるべく悟られないよう、平然を装う事しか出来ません。

「御心配無く。──御代わりなさいますか」

アンリ様が頷かれたので、空になったカップを手に御側を離れました。

何事も無いかのように。

ですがやはり、僕の中では覚醒の予感がふつふつと起こり始めていたのです。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫