《MUMEI》
偶然の出会い
2009年元旦。なんてことのない一年の始まり。

僕の名前は伊藤宏之。
今年41歳になる。
そう俗に言う厄年だ。

本当なら厄払いにでも行くのかも知れない。

去年は前厄ということで厄払いに行った。結果、生まれて初めての入院生活を経験した。

だから今年は行かない。元々運命や迷信を信じるタイプでもないし・・・

朝一番に実家に顔を出して、正月の挨拶をした。

雑煮を食べながら、離婚した妻と暮らす娘達の話になる。

やっぱり孫の事が可愛いのだろう。

離婚して11年。長女は4月から高校生。次女も中学3年になる。

僕は定期的に娘達に会っている。誕生日とクリスマスのプレゼントを買うためだ。

いわゆるスポンサーってやつかも知れない。

両親はそうもいかず寂しい思いをしているのだろう。親不孝だと反省するところもあり、長居はせず自分のマンションに戻った。

かと言って正月早々何もする事もないし、自然と近所のパチンコ屋に足が向いた。

ここ何年も日々を楽しいと思った事はない。

つまらない一人暮らしを送っている。

心を奪われる女性にも出会っていない。

何の気無しに空いている台に座って、ふと横を見て驚いた。

運命なのか。あの時の女性だ。心がときめいた。僕は焦った。というか動揺していた。

昨年4月、僕が生まれて初めての入院生活に入る前日以来の偶然に。

2008年4月14日、その日僕は新橋にいた。霞ヶ関から歩いていた。気分は最悪だった。

自分でも身体の異変には気がついていた。左側の耳鳴りと顔面の麻痺がひどい。

めまいもしている。やっと日比谷通りの交差点に着いた。

信号待ちをしていると、目が霞む。その時一人の女性の姿だけが見えた。

何故だろう。気がつくと信号が変わる前に走り出していた。

どこに行ってしまったのだろう。辺りを見回しても見当たらない。

割れるような頭の痛みが走った。

気が付くと僕はベットに寝ていた。左腕には点滴が刺さっている。

すぐに病院だという事がわかった。でも何故だ?

ドアが開いて、医者が入ってきた。

「気分はどうですか?」



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