《MUMEI》

   球技大会。

「高柳!サッカーだよな?応援してるから!」
同じクラスの松岡博臣が樹に話しかけて来た。

バスケ部に所属している彼は当然の如くそちらに駆り出され、彼自身、普段クラスで目立たない分の自己アピールの機会だと、力が入っている。


   ピィィィィ


ホイッスルの音で、サッカーが始まった。
人が散り散りになる。
ボールはリズミカルに一定の音程で蹴られてゆく。

徐々に端に寄り、テンポアップ。ゴール際に居たせいでボールが回って来た。

繋げるだけの簡易なパス回しをと、樹は左足をだす。


ガッ!

急な脛に走る激痛。
「……グッ、」
密やかに声が出た。

パスの後ごった返した人込みの中で、蹴られたのである。

スパイクじゃない事が幸いだった。


脛に足跡の痣がうっすらと浮かぶ。小さめのサイズ。
樹は何故だか斎藤アラタのか細い脚を思い出す。
理由を述べよ、とすれば、連想ゲームだろう。

…小さい足跡…斎藤アラタの脚。いたってシンプル。

似ていた、それだけの事。


深く考える隙も与えず、バドミントン男子の試合開始の放送が響いた。

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