《MUMEI》

旦那様と治人様なら


二人なら


男性二人がかりでなら


昭人様を止められる


そう、私と大奥様は思っていました


…それなのに


『『…』』


私と大奥様は、言葉を失いました。


部屋の中には


部屋の床には


既に動かなくなったお二人の体が


死体があったのです。


その血は赤ではなく、赤黒く変色しておりました。


『親父を殺したのは、治人だ』


!!


私は大奥様をかばいながら振り返りました。


そこには


大量の返り血を浴びた昭人様が立っていました。


『後は…お前達だけだ』


お屋敷にいた最低限の女性の使用人達は





昭人様に、殺されてしまいました。


『どういう事です?』


大奥様は、私の後ろから問いかけました。


その声は、いつもの凛としたお声ではなく


蚊の鳴くような


弱々しいお声でした。


しかし


声も出ずに震えるだけの私に比べたら


大奥様は、御立派なお方でした。


そして


本当に


優しい、お方でした。

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