《MUMEI》

『櫻は俺達三人を、好きだと言ってくれた。

…三人とも、同じ位好きだと。

だったら、世間的に一番ふさわしいのは

俺、だろう?』


昭人様の言葉に間違いはありませんでした。


旦那様と櫻は親子以上の年の差があり


そんな櫻を後妻に迎える事は


格式ある小早川家の汚点になります。


また、後継ぎの治人様の嫁が、使用人の娘というのも、同じように汚点になります。


『だから、櫻は俺の物だ。
それなのに、親父も兄貴も納得しなかった。

特に、兄貴は家督を俺に譲るから、自分が櫻と結婚すると言ってきかなかった。
だから、親父に後は継がないとくってかかった。

親父は、兄貴の能力は買っていたし、俺が後継ぎにふさわしくないのはわかっていたから、必死で説得した。

親父は、俺の次に冷静だったな』


昭人様は、ため息をついて、更に続けました。


『…兄貴があんな事をするなんて

櫻の為に

邪魔な、親父を

俺を

…殺そうとするなんて、意外だったな。

普段お優しい奴ほど怖いって本当ですね?

お祖母様』


血まみれの昭人様は、にっこりと微笑みました。

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