《MUMEI》
文化祭二日目
(不思議だ…)


昨日と同じように明皇の校門をくぐったのに。


昨日より、人数が多いのに。


「何であんまり注目されないんだ?」

「『木を隠すなら森の中』だからでしょ?」


俺の隣にいる志貴が、悪戯っぽく笑った。


今日は、俺と志貴以外にも大勢の演劇部員がいて、俺達は全員制服だった。


「私はともかく、祐也は男にしては身長普通だし」

「そっか…」


(だからか)


この集団の中で、一番注目を浴びていたのは頼だった。


しかし、頼は集団行動があまり好きではない様子で、明らかに不機嫌だった。


更に


「うわ、この中入るのか?」


演劇発表がある体育館は既に人が溢れていた。


そのほとんどが、俺達のような他校の制服を着た生徒達だった。


俺達は、単なる見学だが


彼等の目的は、常に演劇コンクールの上位に入るという明皇演劇部の偵察だった。


「部長はコンクール興味無いんですか?」

「私は観客が楽しむ舞台を作るのが好きなの」


そう言って、部長は薫子さんスマイルを浮かべた。


「あ、始まるわよ」


そして、演劇が始まった。

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