《MUMEI》 王道「やっぱり本格的だな。あのバルコニーとか」 橋本が、ヒロインが立っているバルコニーを見て呟いた。 「演出は王道だけどね」 「そうなんだ…ところで、これってオリジナル?」 俺は、スポットライトに照らされ立ってバルコニーに立つヒロインと、その下にいる相手役の男性を眺めながら、素朴な疑問を口にした。 (…ん?) 何気なく言った俺の言葉に、皆が一斉に注目した。 「田中先輩…」 「何?」 首を傾げる俺に、代表して、坂井が恐る恐る質問した。 「あの…この話、知らないんですか?」 「うん」 「…全く?」 「うん」 「本当に?」 「うん」 「信じられない…」 坂井の言葉は 部員全員の言葉だったらしい。 ついでに、演劇部員ではない志貴も、同じ気持ちだったようだ。 その、俺が初めて見た明皇演劇部の演劇のタイトルは … 『ロミオとジュリエット』 という、悲恋モノだった。 そして、この物語は 後から来た祐や葛西先輩でも知っているような 超がつくほど有名な物語だと 俺は今日、初めて知った。 前へ |次へ |
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