《MUMEI》
また会えるかな…?
とある病室の前の長椅子に、一人の男が座っていた。

どうしてオレは、こんなにも無力なんだろう?

そう思ったのは数え切れない。時にはそれで自分の仕事を投げてしまうくらいだった。

もう先が長くない彼女を助けたくて仕方ない。出来ることは何でもする。そう思っている心とは裏腹に。

自分はとても無力で、何も出来ない。ただ彼女が衰退していくのを見ているだけしか出来ない。

それに気付いて、不甲斐ない自分に気付いて、とても腹が立つ。

「ああ、くそっ…」

やってられない気持ちになる。何もかもを投げ出したくなる。

ふと、目についたカーテンを引き裂けば気分は晴れるだろうかと考えた。

だがそんな事をしたところで何かが変わるわけでもない。

「全く、オレは何なんだろうな…」

大人しく彼女の病室の前の長椅子に腰掛けて、自分の心を落ち着ける。

「あーあ、オレの願いを叶えてくれる神なんて、存在しないんだろうな」

皮肉でも言わないとイライラが収まらない。それほどまで彼の神経はすり減っていた。

それからまた暫く黙り、気持ちを落ち着ける。

彼女にはそんな自分を見せたくない。彼女の前ぐらい、明るい笑顔でいたいから。

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