《MUMEI》 「リュート、無理はしないでね‥?」 アンリ様は頻りに、僕を御気遣い下さっています。 その度に僕は、 「御心配なさらないで下さい」 笑顔を作ってそう答えるしかありません。 令嬢であり、御主人様でもある御方に、『好きです』などと簡単に言えるでしょうか。 僕は執事、アンリ様は御主人様。 同時に、僕は半鬼のヴァンパイアであり、アンリ様は純粋な人間。 地位も境遇も違いすぎます。 にも関わらず、僕はこの御方を──‥ 「リュート」 「‥も‥申し訳ございません、その‥」 慌てる僕に、アンリ様は優しく微笑んで、 「お邸に戻りましょ」 そう仰って僕の手を、そっと両手で包み込んで下さいました。 前へ |次へ |
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