《MUMEI》

「元気、出た?」

突然にアンリ様が覗き込むようにしながら身を乗り出して来られたので、僕は危うくティーカップを落としそうになりました‥。

ですが、動揺を悟られる訳には参りません。

「はい、有り難うございます」

僕は答えて、また紅茶を1口含みました。

何だか、心が落ち着いてきました。

アンリ様の御陰です。

「──有り難うございます」

「うんっ」

アンリ様のその微笑みに、僕はやはり動悸を覚えずにはいられませんでした。

ですが心無しか、痛みは和らいでいるような気がします。

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