《MUMEI》

「──小坂、泣いてた‥?」

「‥ぇ‥」

いつ来とったんやろ‥

新木‥。

「授業‥始まるけど──‥」

「ぁ、ごめん‥。今行くな」

目を擦ってから──

なるべく笑うて振り返る。

そこにおった新木は‥

何だか元気があらへんみたいに見えた。

「えっと──次は音楽室やったな。行こか♪」

「小坂」

「ぇ‥?」

新木は真剣な顔をしてウチを見つめてきた。

「ごめん‥」

「ぇ、何で?」

「‥‥、ごめん」

「ウチが勝手に出て来ただけやな。新木は何も──」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「ほらっ、行こっ」

そう言うて笑いかけたら──

新木はやっと頷いた。

でも‥

やっぱり何か思い詰めとるみたいやった。

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