《MUMEI》

いつもの道からちょっと外れて草原に出た。

「今は殺風景やけどな、春になると花畑みたいになるんよ」

「そうなんだ──」

「春になったら──また来てみーひん?」

「‥春に‥?」

「うん。綺麗なんよ、蝶とか飛んでたりもするし」

「蝶──」

「ぁ‥、新木そういうのあんまり好きやないか」

「ううん、嫌いじゃない」

「ホンマ? ほな来年、春頃また来てみよか」

「うん」

新木は頷いて、笑うてくれた。

その笑顔は夕陽の光みたいに眩しくて──

あったかい感じがした。

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