《MUMEI》

「うん、冬になったらお花を見れないと思って──‥」

「そうですね。どうぞ、御ゆっくり散策してらして下さい」

僕が微笑み掛けると、アンリ様は頷いて、嬉しそうに庭園へ出て行かれました。

僕はキッチンの小窓から時々、その御様子を眺めながら、ケーキの生地を混ぜていました。

中には苺を入れましょうか──。

それとも、桃がいいでしょうか。

アンリ様に──御訊きした方が宜しいですよね。

僕は一旦作業を中断して、アンリ様が散策されている庭園へと向かいました。

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