《MUMEI》

その御言葉は、僕にとって──とても意外なものでした。

「‥アンリ様‥?」

「このお邸には私と貴方しかいないんだもの。誰にも咎められたりはしないでしょ?」

「──ですが‥」

やはり敬意を欠く訳には参りません。

この御方を崇拝し、御仕えするのが僕の仕事。

「御言葉は有り難く頂戴致します。ですが、僕は貴女様をそのようには──」

言い掛けた所で、再び小さな笑い声。

「分かった。好きにしていいよ」

「‥申し訳‥」

「謝るのはなしね」

「‥アンリ様?」

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