《MUMEI》 脳裏に蓮翔ちゃんの試合観戦中、 俺を尋ねて来たおじさん二人が浮かぶ。 一人は片手にメモ帳を持ち、 もう一人はどデカいカメラを抱えていた。 俺が最も嫌うマスコミだ。 あの時は俺が怒鳴っただけで、 潔く引き下がったみたいだった。 いや、潔く引き下がった振りをしたのだ。 影で俺達のことを探ってたのか……。 写真まで撮りやがって……。 俺はフツフツと込み上げる怒りを抑えながら、 あることを考えた。 待てよ……。 もしかしたらあの新聞だけでは無いのかも知れない。 テレビやラジオで放送されているかも知れない。 マスコミのことだから絶対そうだ。 アメリカに留学していた時でさえも、 追っかけて来たのだから。 そこまで考えると、突然思考回路が停止した。 とんでもなく恐ろしいものを想像したからだ。 そんな俺の様子を察したのだろう。 「どうした?」 心配そうに眉を寄せる蓮翔ちゃんと、 視線がぶつかった。 「不味い…俺…。」 「ん?」 「とんでもないことをしでかした……!」 前へ |次へ |
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