《MUMEI》
女装静
『…うるさい』


俺は、頼を睨みつけた。


今は、俺達は制服だが


本番は、ウィッグを着けて


化粧をして


…女物の着物を着なければならないのだ。


『女の子を欲しがった母親の影響で、女として育てられてしまった男』


それが、俺の役柄だった。

ちなみに父親は、女装などすぐに似合わなくなるだろうから、そうなったら男としてきちんと育てるつもりだったが、何故か静はいつまでも女装が似合ってしまい、世間では娘で通っていた。


それが、野生の勘というか、変態の勘で男爵に男とバレてしまい


ラストシーンの衣装は…白無垢になっていた。


(何が悲しくて、女装・しかも、花嫁衣装なんか着なくちゃいけないんだ)


俺は今から憂鬱だった。


それから俺は、頼のセクハラ三昧の演技に何とか耐えた。


(疲れた…)


正直、家に帰りたかった。

「さあ、祐也!帰ろう!」


しかし、頼がそれを許さなかったし


(それに…)


体育館を先に出ていった厳と松本が気になった。


「制服でいいよな」

「いいよ! もちろん!」

そんな俺と頼のやりとりを見て、志貴が口パクで何度も『頑張れ』と言っているのが見えた

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