《MUMEI》 広間から振り子時計の音が聞こえて来る中、僕はいつもの報酬を頂きました。 大切な、愛しい御方。 そう思っていながらも、僕は牙を立ててしまう。 愛しいが故に。 「アンリ様──」 そう呟いた時、微かに吐息が洩れるような声がしたので、慌てて御側から離れました。 折角御休みになられている御方を、起こしてしまっては失礼ですから──。 ですがやはり、御側を離れ難くて、暫し扉を背にアンリ様の御姿を見つめていました。 前へ |次へ |
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